安藤の仕事の一端。

 

人がパッとみて、

「あっ、なんか綺麗だな!」と思えば、それは良い仕事をしていると思います。

 

 

そういう綺麗な仕事の「裏側」を語るとするなら、

私の信念としては、クレームアフターが出ないように、ありとあらゆる事をしておく、という姿勢が大事なのではないかと思うのです。

 

簡単に言えば、「昔から伝わる伝統技法+現代で使われている金物を使用する」という事です。

 

 

よく「伝統工法だけで家を作りました」という事を売りにされている会社さんを見掛けますが、

その建築の竣工後を見て回ると、割と要所が壊れていたりするので、

それだけでは脆弱な気がしてならないのです、特に住宅においては、です。

 

逆に、現代の金物だけを頼りに仕事をするのも、希薄なものづくりになる様な気がして、偽物と思えて仕方ないのです。

実際、伝統工法の「こみ栓」などの細工の構造計算値は、現代の金物より数値が良かったりします。

「追っ掛け大栓継ぎ」も、破壊実験では素晴らしい数値をたたき出します。

 

ですから私は、両方(=昔と現在の技法)で攻めるのが、本道ではないかと思っているのです。

 

 

ちなみに、国宝級の古代の木造建築で、釘が使われていない建築はないと記憶しています。

現代で言う白鷹さんのような鍛冶職人(釘などを作る職人)が、出雲大社の創建時前から居たわけですからね。

 

よくTVなどで耳にするのが、

「この古代建築は、金物を一つも使っていない木造建築だ。凄い!」という言葉ですが、

色々な意味で大きな??が付きます。

 

 

世界最古の木造建築である「法隆寺」でも、立派な「釘」が使われています。

長さ30㎝ぐらいの釘です。

両手で振らなければ使えないような大きな金槌で、その巨大な釘を打ち込みます。

まさに鍛冶職人が1本1本鍛錬した釘です。

但し、この時代の鉄の成分は純度が高く、現在とは比較にならないような高性能な釘になります。

「あま切れ」するような鉄なのです。

 

 

この写真は木製建具を下から見た画像です。

安藤工務店の木製建具のカモイ(=建具用の溝が引いてある上部の横向きの木)の上側を覗いて見ると、

実は、釘やネジやボルトの痕跡があります。

それで良いのです。

建築用語である「逃げ」の部分だからです。

この逃げの部分で、どれだけ丁寧な仕事をしているか、なのです。

 

「本当の意味での逃げを熟知し、その見えない部分でやるべき事を全てやる」というのが、技術者の「謙虚な姿勢」ではないのかと思うのです。

 

安藤洋介