「引き算」とは…??

 

私は以前、(建築家の「伊礼智」さんとよくタッグを組まれる)造園家の「荻野寿也」さんとこんな話をしたことがありました。

 

 

 

 

「造園設計は足し算で、建築設計は引き算だよね」と。

 

 

私は完全なる右脳派で(笑)、感覚としてこれを私の建築哲学の一つにしているのですが、今回はこれを分析して論理的になるべく分かりやすくお伝えしたいと思います。

 

 

まず文化や宗教を通して、日本の建築史を見ていくと、飛鳥時代(飛鳥寺や法隆寺)に始まって、

 

 

 

 

 

(潔さを唱えているとされる)禅宗が広まった鎌倉時代までの建物が、日本では最も「簡素で構造美に満ちた」ものであると気付かされます。

無駄な装飾がなく、簡素でいて力強い。そのシンプルさがとても日本的で美しく、精神性の伝わるものとなっています。

 

 

北欧も「木の文化」であり学ぶべきところは沢山ありますが、その北欧の一つデンマークでYチェアを造り出した「ハンス・ウェグナー」が最も影響を受けたとされる”デンマーク家具デザインの父”「コーア・クリント」もこのように言っています。

 

 

「古代は、我々よりもずっとモダーン(現代的)である」と。

 

 

「潔さ」の先には「簡素」がある。

「簡素」とは「シンプル」である。

つまりそれらは「現代のモダニズム建築」に通じていると考えます。

 

 

「現代のモダニズム建築」で、私の好きな建築家を挙げると、「伊礼智」さんや「中村好文」さん辺りではないかと思います。

 

 

モダニズム建築の生みの親は、言わずと知れた近代建築の三大巨匠の一人と言われる「ル・コルビジェ」でありますが、

 

 

 

 

日本では、「ル・コルビジェ」→

 

「アントニン・レーモンド」(ノートルダム清心女子大学を設計)

 

 

→「吉村順三」

 

 

に受け継がれ、現在の設計技術者たちに広まっていきました。

 

 

恐れ多くも彼らの設計を分析してみると、簡素で無駄がなく、とても美しい。そう、無駄な「線」がありません。

全てはバランスなのですが、設計とは、どれだけ「線」をシンプルにし、色使いをまとめ、品をだしていくかだと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「建築設計は引き算」

 

 

県下の工務店雑誌を拝見してみると殆どの建物が、これ見よがしの「足し算の設計」である事がよく分かります。

「線」も「色」も「照明」も盛り沢山で…

 

 

そのセンスは他の事でも顕著に表れてくると思います。 例えば、弊社が今年唯一掲載させていただいた山陽新聞社の「建てる倶楽部」ですが、見開き2Pで、他社さんは写真の数がだいたい10枚。

造り手として見せたいのは山々なところを、ページいっぱいギュウギュウに詰め込むのではなく、そこをあえて引き算して、弊社は5枚で抑えさせてもらいました。

これが弊社の考え方です。

 

 

 

 

名刺を見てもその人のセンスを窺い知ることができます。

 

造園家の荻野さんの名刺なんてセンスそのものです。

 

 

英国のルーシー・リーの器からもそれを学ぶことができます。

あの白と、ブルーとピンクの釉薬の美しさとシンプルな形は、生で見ると言葉を失います。

まさに、「簡素にして品格あり」です。

 

 

 

 

 

夜が長く、家の中で過ごす時間を大切にする、独特の木の文化と感性を持つ「北欧の住宅」と、

日本の「精密で清潔な木の技術」と、

「引き算の設計」を融合させた住宅を、今後も目指して造り続けたいと思っています。

 

by 安藤洋介