ようやく行くことができました。
プラン作成のため、
西阿知の土地と、鴨方の土地を見に行った帰りでした。
この「水辺のカフェ」の設計者は、美観地区にアトリエを構える建築家の「仁科」さん。
岡山県で最も有名な建築家「楢村徹」さんのもとで住宅設計を学ばれた方で、
実は、その仁科さんが十年前に新築第一号を設計された時の棟梁が、私でした。
余談ですが、その仁科さんの師匠の楢村徹さんは、あの安藤忠雄さんの弟子であり、全国に「古民家再生ブーム」を巻き起こした建築家で、岡山県では最も実績のある巨匠です。県内沢山のファンがいらっしゃいますね。
実は私も、憧れていた楢村徹さんの設計する木造建築を二十代後半で棟梁として任せていただき、数棟ほど手掛けさせていただきました。
楢村徹さんの設計する住宅は「福島のアトリエ」と同じ様に、全ての部材が化粧物です。
例えば、社寺建築でよく使われる追っかけ大栓継ぎが20数カ所あったり、込み栓が100本あったり…、松の虹梁丸太はもちろんのこと、その丸太に90㎜角の化粧垂木が突っ込んで、何もなかったかのように軒先からその化粧垂木が生えてくるような納まりだったり…。
それらの化粧木を一本一本、あえてたった一人で三ヶ月間「墨付け・刻み」をして、
棟上げでは一カ所も間違えることなく納めたときは、皆さん本当に感動して喜んでくれました。
そもそも、建築家の「楢村徹」さん「大角雄三」さん「神家昭雄」さん「仁科」さんなどが設計する全国区レベルの和モダン住宅は、
腕を認められた棟梁でなければ請けることはできず、
大工にせよ監督にせよ工務店にせよ、ごく一部の技術者しか携わることができませんでした。
事実、ハウスメーカーで重宝されていた大工さんが実績を求めて棟梁をはってみたものの、工事途中で交代させられるようなこともありました。
その名を全国に轟かせた彼らの建築を棟梁として納めてきた実績が、その後の私のキャリアを決定づけています。
なぜなら、安藤工務店の「福島のアトリエ」「南輝の家」「浦安の家」などの”本格木造建築”は、
この実績がなければ実現することはありませんでしたから。
by 安藤洋介