ディテールを追究し、内と外の「二重枠」で仕上げました。
部屋内側の枠は、私も大好きな赤と白の「無節の源平杉」を採用し、事前に加工場で鉋掛けしたものを細工していきます。
家の顔である玄関であり、しかも「造り付けの建具」がくるわけです。であれば、やはり、重厚であって欲しいですよね。
でも安藤工務店らしく、シンプルに軽やかにすることも忘れたくはないですね。
写真で分かりますか?
ディテール図にもあるように、さりげなく、部屋内に向かって「斜めに削り取って」身を細くしているのが。
厚みのある太い材がそのままあると野暮ったく見えるんですね。
こうして少し削いでやると、「重厚でありながらスッキリ」と魅せることができます。
そして、鴨居をこれに対して強固に繋げるために、鑿(のみ)で細工をしてやります。
面が斜めになっているので、少し繊細な仕事が要求されますが、なんなく鋸の刃を入れて、鑿で仕上げます。
この方立(枠)の下端は、玄関床の土間との接合部分になりますので、言わないと誰にも分からない仕事ですが、
洗い出しの工事時の水を少しでも吸い上げにくくするために、「防水テープ」を貼ってやります。
そして、その方立(枠)と鴨居を組み、壁に取り付けます。
急所ですから、隙間のあるような野暮な仕事はしません。
組んだ枠を壁に取り付け、その状態を外から見たものです。
写真でも見える「しゃくり」は、外部側の枠を入れ込む為のものです。
この「しゃくり」がなくても一応ボンドとビスで一体とすることはできますが、それもお引き渡しまで。
年数が経つと肌別れしてきます。
こうして「しゃくりを入れた材」に、「細工をした材」を組み合わせると、一生離れることはありません。
ここもディテール図通りに仕上げます。
ボンドがはみ出ているのが見えると思いますが、ボンドについても私はある確信を得ていて、
「無垢の木」には、よく他で見受けられる「水性ボンド」は使いません。
いつか、TVで古民家再生の番組をしていましたが、そこでは無垢の木に水性ボンドを使っていました。
あれは嘘ですね。
無垢材の木鳴りと伸縮性を理解していない。
外側の枠は、福島のアトリエ等でも同じみの米松の柾目(ピーラー)を採用して、これも事前に加工場で鉋掛けして、細工をしていきます。
そして、源平杉の枠に取り付けます。
写真で分かりますか?
源平杉枠とピーラー枠との間に10㎜の段差を設けています。
別部材である10㎜厚の戸当りを玄関枠に取り付けると、格好良くないんですね。
こうして段差を生じさせて、さりげなく戸当りにしてやると、なおスッキリ魅せることができますね。
スッキリ魅せるための極意とは、
「どれだけ事前に考えて、必要最小限だけの見切りにしてやるか」ということですね。
つまり「要らない線をなくす」というわけです。
写真では伝わりにくいけれど、綺麗な玄関二重枠が完成しました。
あと最後に、本当はとっても大切な「養生」について。
「無垢の木」に対しての養生の仕方は、他とは違い細心の注意を払って行います。
いつも通りの養生テープの貼り方でいってしまうと、無垢の木の場合、テープを剥がすときに木の表面がぼろぼろになります。
季節によってはテープの糊が煮えてとんでもないことになります。
かと言って、テープを貼らなければ、養生材と化粧無垢材の間にゴミが入り傷がつきます。
さて、どうすれば良いのでしょうか?
あと、中途半端な養生で済ませると、まだらな日焼けをしてしまいます。
日焼けを完全に防ぐか、均一に日焼けをさせるかのどちらかでないと、他でもよく見受けますが、お引き渡し時にとんでもなく汚い事になっていますね。
さて、どうすれば良いのでしょうか?
腕の良い技術者なら答えは知っています。
そういった見えないところに細心の注意を払いながら現場で仕事をしていると、最後の最後に、造った物が応えてくれるんです。
住み手が味わう前に、まず造り手がその綺麗さに感動しますからね。
気を遣い、ひと手間入れることは本当にしんどくて、自分との戦いだけれど、
後のご褒美が大きすぎてやめられない。
by 安藤洋介