プラン設計時には必ず土地を見に行くが、 最初に確かめることは「最も視線が抜けて、景色が広がる場所はどこか」ということ。
この土地ではそれが東と西であったが、西は西日の問題があり、東は隣家が2メートル高い地盤に建っており見下ろされるような土地環境となっていた。クライアントも私共も「温もりのある木の家を建てたい」と考えていたが、土地は準防火地域であったため、「予算と意匠」のバランスを考えながらの「高度なプラン設計能力」が問われた。

試行錯誤した末に西を「内と外が繋がる開口部分」とし、「土庇・植栽・木塀」で、夏の暑い日差しを遮るようにした。
準防火地域仕様のガラスは針金の網入りガラスとなり、防火性能は上がるのだが、そこからの眺めの良さはどうしても落ちてしまうため、西の大開口と玄関建具部分だけは、この準防火仕様の範囲から「外れるように」プラン設計をした。執念だったように思う。

「準防火地域での軒裏部分を化粧」というのは、県内でも前例の少ない仕様だ。
この御崎の家でも、目に見えない細かな納まりまで考え抜いたことで「予算と意匠と構造」のバランスの取れた建築の実現が可能となった。
造り手としても満足している。

竣工時では、お子様3人が嬉しそうに所狭しと遊び周っていたのが、冥利に尽きる瞬間だった。

竣工:2018年
所在地:岡山県
構造規模:木造軸組通気工法 2階建
延べ床面積:113.86㎡
設計:安藤建築設計事務所
施工・監理:安藤工務店
外構・造園:安藤工務店