妹尾崎の平屋 「仕事work」一覧
小高い丘の上に建つ平屋の住宅と農業用倉庫。
敷地は丘陵の中腹に位置し、かつて豪商の住まいと奉公人が住む長屋、倉が建っていた場所にあります。
丁の字型のそれぞれの突先に個室を配置したプランの二世帯住宅。それに日本瓦葺きの切妻屋根を架け深い軒を出しています。家事動線の快適性、各個室のプライバシーを確保しながら、水廻りの使い易さに注力しました。
居間と食堂は、北側の眼下に広がる素晴らしい田園風景と、南側にせまる丘の斜面の緑と光を充分に取り込みたいと考え南北に大開口を設けました。天井は屋根の形が室内に現れる折置組としており、登り梁や桁、母屋の構造材だけではなく屋根垂木と野地板までを化粧とした、簡素で力強くそれでいて上質な空間を造り出しています。折置組を形成する登り梁や桁、母屋は、材木屋へ足を運び1本1本選んだ上小節の吉野杉を用い、自ら番付け、墨付け刻みをしています。この家に流れる凛として穏やかな空気は、杉の持つ木肌の柔らかさや濡れたような色艶、そして人が手で刻んだ温もりが大きく影響しているのではないかと思うのです。
所在地:岡山県
竣工:2023年
構造規模:木造軸組通気工法 1階建
延べ床面積:238.90㎡
設計:安藤建築設計事務所
施工・監理:安藤工務店
外構・造園:安藤工務店
掲載誌:住宅建築 2024年6月号 №505 (建築資料研究室)
撮影者:笹倉洋平、大林直治