今回の欅(けやき)は、タモやイタヤカエデ、ベリーなどの広葉樹の堅木よりもさらに重くて固い材である。
一枚物のケヤキ材は、私の弟子時分までは伝統建築の床の間でよく使われた。
今では、本床の和室があってもほとんど見掛けなくなった代物だ。
この固くて重い材を制圧するために、伝統建築でも見掛けなくなった上等な仕事とされる「ショウワボルト」を使い、強固な構造とした。
「有事の際、ご家族はもしかするとこの机の下に潜って、身を預けるのかもしれない…」
そんな事を想いながら、いつもテーブルは造っている。
脚の埋め木はほとんど見えない。
これが技術力。
見返しで見えなくなる所も、妥協せずに埋め木をする。
スリムな北欧家具はとても好きだが、「空間に迫力を付けること」も木造建築設計では大事な要素の一つだ。
北欧家具が全てではない。
写真では上手く伝わらないが、北欧家具や家具職人には到底真似のできない本物の重厚なテーブルが完成した。
眼前にあるこのテーブルは確かに美しく、迫力を持って佇んでいる。
by 安藤洋介