京都でもお見掛けしない隅木の先端のディテール。
尺寸の差しがねを使い、「屋根勾配4寸を基軸とし、裏目(隅勾配)の4寸の返しの、さらにその半勾配」でディテールを造っていく。
樋で少々隠れてしまうが、実は隅木の鼻先はお家の顔でもある。
今まで見てきたどの隅木の先端部よりも美しい。
(なぜそんな事が言い切れるのか?
なぜなら、この隅木の鼻先のディテールを決定するために、京都・奈良・岡山でどれだけの建築を見て悩んだことか…)
次に、広小舞と、はり付け垂木を留めていく。
これらの切り口の細工も、尺寸の差しがねを使い納めていく。
「平勾配」を導き出し、「向こう留め」を納める。
いわゆる木造伝統技術の「差しがね規矩術」。
そして、軒先が美しく見えるように、垂木の「出」を微調整しながら横一線に合わしていく。
化粧板は、杉の節有りを採用。
板を1枚1枚見極め、適材適所で張って行く。
なぜ、とても面倒な行為である、1枚1枚手に取って見極める事をするのか?
軒裏にも、部屋内同様、「東西南北に優先順位」がある。
無節ならどれをとっても綺麗に映り問題はないが、
節有りは1枚1枚品質にバラツキがあるため、造り手がしっかりと優先順位をつけてやらなければいけないのだ。
そのひと手間で、お家の印象は怖いぐらいに変わる。
そしてなにより、杉板張りで最も気を遣うのは、軒裏が化粧なので、「釘が下へ出ないように」最新の注意を払うことだ。
「化粧垂木の仕上げの軒裏」が高値とされる神髄がここにもある。
「桁(けた)」の先端にも気を配る。
垂木同様、杉板が綺麗に付く様に、桁の兜(かぶと)を小鉋(こがんな)で削り合わしてから杉板を張る。
最後は、耐水の針葉樹合板を、唐草の「出」を55㎜出すように貼っていく。
屋根勾配と樋の関係性を見極め、唐草の出は決める。
軒の出2メートルを超える「寄せ棟造りの土庇」の完成。
京都「詩仙堂」を、現代の木造建築に解釈した「土庇」だ。
社寺建築でも重宝され、最高強度をもつ伝統的継手の「追っかけ大栓継ぎ」も色を添える。
15㎜角のカシの木の「込み栓」も何とも言えない風情を醸し出している。
ただそれだけではなく、この「伝統的・込み栓」は、通常使用される構造金物より耐久数値が高いとされている。
写真では伝わらないのが残念だが、圧巻にして美しくもある。
ここに、植栽をして…。
夢は広がる一方だ。
by 安藤洋介