日本建築の美と言えば、古来より「軒」とされてきました。
同時に、軒を化粧(あらわし)にしたり、軒の出や妻の出の奥行きを出すことは、大工技術の粋とも言われてきました。
私は、住宅の外観でどこに重きを置くか?と人に問われれば、迷うことなく「屋根」と答えます。
安藤工務店の造る家の外観の特徴は、屋根の「シンプルなライン」だと思っています。
私がもっとも尊敬する、ある建築家がこう仰っています。
「日本舞踊って指先が大事ですよね。指先の所作でその踊りが綺麗に見えるわけですよ。軒先とは日本舞踊でいうところの指先みたいなものではないでしょうか。そこがきれいに納まっていると、全体が美しく見えるんです」と。
センスが良いと感じられる住宅は決まって、
屋根が「シンプルで美しい」。
樋(とい)がつく軒先の「唐草」といわれる広小舞の細工です。
シンプルデザインでありながら雨仕舞いを考慮して、3㎜のしゃくりを入れて、板金(ガルバリウム)を差し込むようにしています。
少しでも、雨水が切れるようにしています。
軒を化粧にするときに欠かせない伝統的な箇所の「面戸板」。
垂木と垂木の間に入れて壁を作ります。
安藤工務店は、垂木を5㎜欠いで、その中に面戸板を落とし込み、面戸板が収縮しても空かないようにしています。
ちょっとした事ですが、本間普請のような(安普請ではない)日本建築では、伝統的にされている上等な細工です。
あと、この土地は準防火地域ですので、一般的に軒裏をあらわし(化粧)にする事は困難とされています。
準防火地域は、「工業製品の不燃材で覆うこと」とされているからです。
ただし、こうも明記されています。
「それと同等の効果を生み出すものであること」と。
「ただし」に目を付けて、追究して突破して行くのが安藤工務店です。
住宅センターに問い合わせをして、建築基準法と照らし合わせながら、独自に色々と思案している中で閃いたのが、
「建築基準法で認められている30㎜以上の厚みの木材であれば耐火材として認められる」というものでした。
普通、日本建築では面戸板は20㎜前後です。そこを、45㎜の木材を使用することによって、不燃材と同等の効果を生み出すことに成功しました。
最後は、軒裏をあらわし(化粧)にするために、化粧の板を貼らなければなりません。
ただし、そこに予算をあまりかけられないという事で「節あり」の杉板を選びました。
でもね、高値のものを使わないと一流のものはできないと皆さん思ってますが、決してそういう事ではないんです。
むしろ、「節あり」の材料でも「そう思わせない仕上がり」にするのがプロですよね。
梱包をばらしてただ貼るのではなく、私は、貼る前に250枚の杉板を1枚1枚見極め、
およそ「上・中・その他」の3クラスに分けてやります。
「上」は人の目に1番近い土庇屋根(ウッドデッキ上)に持ってきてやります。(貼る前に枚数を確保します)
「中」は、この土地の正面=西に持ってきてやります。
「その他」は、裏の「東」などに持ってきてやります。
いわゆる「適材適所」というわけです
ただ、私的には小難しくこだわっているわけでもないんです。
というのも、Y様ご夫妻はすでに、「Yチェア」と「エルボーチェア」と「ラグ」を購入済みなのですが、
お家造りは最後に息切れしたら本当に全てが駄目になるわけです。
トータルバランスですから。
でも、最後に、これらの「シンプルで素敵な家具たち」をY様ご夫妻が用意してくれているわけです。
私共がすでに畑から買い付けて出番を待っている「木々たち」もそうです。
こだわりというより、頭の中は割とシンプルです。
私用のY様邸の重要な分厚いファイル(見積もり等が入っている)の1ページ目は、
打ち合せ当初に奥様が欲しいと仰っていたウエグナーのCH33の写真なんですね。
その1枚の写真だけで、「安藤工務店らしい、スッキリとしたきれいなお家」が完成するわけです。
「こんな素敵な椅子たちが似合うお家を建てたいな~」
「こんな美しい枝振りのモミジが似合うお家を造りたいな~」
とワクワクしながら、現場で大工仕事をしたり、アトリエでディテールを考えながら完成させていくわけです。
by 安藤洋介