巾木(床と壁の接合部に付ける見切り)であっても、そこには弊社の理念が宿る
伝統建築では「先付け巾木」が多いけれど、弊社ではここ数年後付け巾木にしています。
それは、最後の最後まで造作仕事を行う時に自由がきくことと、チリも積もればで立米金額が1/3になるから。
巾木は材質等級を上げる所ではないので、立米数を減らす方が良い。
技術があれば後付けであっても、空く(すく)ことは無い。
敷居や框などの段差があれば、「すり鋸(のこ)」を入れてやって床面まで切り込み、それを二分鑿(のみ)でそぎ落とし、巾木を放り込みます。
ノコギリに当てる材については巾木よりも0.5ミリ薄くする。
そうすれば実際に納める巾木が綺麗に吸い付く。
巾木が8ミリなら7.5ミリの材にノコギリを当てて仕事をする。
手鋸(てのこ)の先は自分で改良して尖らせた。
手鋸の弱点は、先端部付近で綺麗な仕事が出来ないこと。
先細りの手鋸は市販品もあるが、刃厚とアサリがごついので、ここぞという時には使えない。
これから納める加工物なら使えないことも無いけれど、既に建築の一部になっている小さな化粧材に入れ込む道具としては勝手が悪いのです。
だから道具はなるべく自分で作る。
あと、弊社では巾木や畳寄せやシナコアなどに打つ「小口の見切り材」の形状と材は全て同じ物に統一している。
そうすれば「この場所で何本余った」「この場所で何本足りない」等と煩雑にならない。
つまり、無駄な費用が発生しない。
ディテールはある程度規格化させておけば、仕事も早く綺麗になるし、費用のロスもなく意匠性もぐんと上がる。
弊社の誇りは、「協力業者さんを金額で叩いたことは一度もない」こと。
品質に響くことは絶対にしない。
その分、造り手がこうやって知恵を振り絞って、高価になりすぎず上質な建築を造れるように日々追究することが、本物のもの造り精神だと思っている。
協力業者さんを叩くのではなく、
クライアントに無理をさせるのではなく、
元請け会社がそれをする。
それが安藤工務店の流儀。
by安藤洋介