彼の設計センスが好きで、「五感を通して学びたい」と思い、
彼の作品だけで言うと、
今まで京都・奈良・四国・そして石川県や東北地方まで足を運びました。
そこでは、8つの建築を直接見て、彼のセンスを体で学びました。
(ただ、素直な感想として、大工技術レベルについてだけで言うと、
全国区レベルの建築家の建築でさえ、ほとんどが感心しない仕上げでした。
姿見ぬ棟梁に、心の中で拍手をした記憶は3棟程度。。。
怖いことに木造建築は、「造り手の気概」がそのまま仕上げに出る。
実は、「技術! 技術!」と、私もマスコミも声高に言っているけれど、
技術というものはそもそも存在しないと思う。
経験なんてものも存在しない。
そこはとてもシンプルで、
「自分に負けない、妥協しない仕事をしたかどうか。」
ただ、その一点だといつも思っている。
「技術」や「経験」なんて過去のゴミで、出来る人は今「結果」を残す。
木造建築に限って言えば、大工も設計も「プリミティブな仕事」と言っても良いのかもしれない。
あと、最悪なのは、「やろうと思えば出来るんだけどな、、」とか、「予算があればやるんだけどな、、」という職人は「その時」が来てもできない。
出来る職人は、どんな状況・予算であれ、毎回苦しみながらも必ず「一定の結果」を残して現場を去る。
そういう日々の積み重ねをした職人にしか出せない「凄みの精度」がある。
そんな仕事の痕跡を見た時、共感し、感動し、胸が熱くなる。
その感動を、安藤工務店のクライアントには味わってもらいたいといつも想っています。
精神論とかではなく、全国区レベルと言っても「大したことないな」というのが素直な感想です。)
さて、長い前置きをした後で材料について語るとするならば、
まず中村好文さんの好きな言葉があります。
「私の中には、「可能な限り石油化学製品を使いたくない」という気持ちがある。
とはいえ「自然素材以外は使わない」というほど頑固者ではない。
分かり易く言えば「古びた時に美しくなる素材を使いたい」のである。」
そして、この言葉に私の考えを付け加えると、
「クライアントの最も大切なご予算と格闘しながら、
自然素材、集成材、新建材を丁寧に吟味してバランスよく適材適所に配置する。
そしてなによりも、最高レベルの技術でそれらを納めて、見る人の心を掴む。」
これに尽きると思っている。
「普遍的な美」には、本当の意味でのセンスと技術力が求められると思っているから。
by 安藤洋介