設計に積極的に挑んでいる。
もちろん、昔から定番である、南向き・東向きの間取りに異論はない。
ただ、ハウスメーカーによって植え付けられた「北向きは駄目」という定義に、異議を唱え続けている。
・北面に開口を設けると、直接的な強い光が入ってこないので、室内が落ち着いた雰囲気となる。
・近年の真夏の猛暑下でも、室内では程良く光りが入るので、昼過ぎまでは驚くほど涼しい。
・時計作りの本場であるスイスの時計工房の窓は、全て北を向いている。
東西南北で「一番の純光は北」であり、均一な光をもたらしてくれるからだ。
・ともすれば、宝石作りの工房の窓も、北向きと聞く。
・図書館の主な窓は全て北向きである。紫外線が室内に入らず本を傷めないためでもあり、もちろん人間の目にも優しく、集中して読書を楽しめる。
・北庭に植えた木や花たちは、南の太陽光を求めて室内側へ葉を向け、花を咲かせてくれるので、室内から元気の良い庭木を楽しむことができる。
・日本の住宅のほとんどはハウスメーカーが作り上げた常識により、北に背を向けている。そのため北向きに大開口を設けてやると、近隣に気を遣わず、いつでも障子やロールスクリーンを開けてお庭を楽しむことができる。日中は、外から覗かれても逆光になって、ほとんど室内の様子はうかがえない。
近年の住宅は、照明をところ構わず付けてまわるから、明るすぎると思う。
イサム・ノグチの生家がなぜ簡素にして美しいのか?
室内の照明量や、外部から取り入れる太陽光を少し抑え気味にして、外を眺められるようにしているからだと思う。
今まで常識・非常識とされていたことを、1つ1つ丁寧に検証しながら、設計していきたいと思っている。
by 安藤洋介