講演会が奈良で催されたので行って参りました。
かなり早く現地に着いたので外で建築を見ていると、
主催者に「建物の中に入って」と言われたので、
「ちょっとまだ早いよな〜」と思いながらも渋々中に入り、受付を終えて講演会場へ。
すると、中村好文さんがまだ余裕な感じでそこに立っておられたので、「これはチャンスだ」と思い、
持参した中村さんの本をよそよそと鞄から取り出し、サインをお願いしました。
住宅設計の国内の牽引役である中村好文さんの講演会の2時間は、予想以上に珠玉な時間でしたが、
サインをもらった時のほんの1分間の彼とのやり取りが全てだったように思います。
私:「すみません、図々しいのですがサインを頂けますか?」
好文さん:「お名前は?」
私:「安藤洋介です。ヤスイのフジと書いて・・」
・・無言でサインを書き出す。
私:「あっ、ローマ字だったんですね、すみません」
好文さん:「ようすけの「う」はOの上にボーですか?Oだけですか?Oの後にUを付けますか?」
私:「う〜ん、ではUを付けて下さい」
私も、ローマ字で自名を書く時いつも悩むんですね。
どれが正しいのか、と。
「よおすけ」か、「よーすけ」か、「ようすけ」か・・。
中村好文さんの設計の真髄はここにあるんだと思いました。
「1つ1つ丁寧に考えること」
dinnerは、中村好文さん設計の、京都にある「ルスティク」というフランス料理店に行ってきました。
建築空間もそうですが、
何よりマスターの人柄に魅了されました。
奥様が中村好文さんの大ファンだったようで、依頼した時期が、NHKの「プロフェッショナル」に中村好文さんが出演していた時と重なり、4年越しに念願が叶ったそうです。
私達がお店に行ったきっかけは中村好文さんでしたが、マスターの接客の仕方や、作るものに向き合う姿を見て、すっかり私はマスターのファンになりました。
黙々と料理を作る姿、
その料理をお客様に説明するときの、決して饒舌ではないけれど、作った料理にどれだけ彼の想いがこもっているかがこちらにヒシヒシと伝わってくる話し方。
人に何かを伝えようとする時、決して上手い下手ではないんですね。
どれだけそこに想いがあるかなのですね。分かってはいるけれど、彼のそんな姿を見て確信に変わりました。
最後、最寄り駅まで車で送ってくださったマスターと握手をしましたが、
私の好きな、無骨な漢の職人の手でしたね。
皆さんも是非行ってみて下さい。
味ですか?
中村好文さんにも負けない超一級品でしたよ。
by 安藤洋介