軒の出は、可能な限り「深く」したいと思っています。
そして軒の高さは、できるだけ「低く」なるようにディテール図を描きます。
住宅の全体の高さ(=矩計図)を決定する際は、
軒の先端の高さ寸法を決めてから、それを逆算して行います。
「一番気持ちの良い高さはどれくらいだろうか?」という具合です。
岡山では、こんな設計者はそう居ないのではないかと思います。
軒下で背伸びして手を伸ばせば軒裏に届くぐらいでも良い
それはつまりメリットしかなく、雨露風雪から外壁を守れて家の耐久性は格段に上がるし、
なにより住宅の座りが良くなってプロポーションが美しくなるからです。
欧州にあるような組積造りとは違い、日本の木造住宅は木質なのでどうしても軽く見えます。
ですから、どっしりとした重厚な佇まいにするにはどうすれば良いのか?を様々な角度から検証するのです。
要するに、重心を下げるための工夫をするのです。
よく他で見かける住宅では、寸法を上へ上へ高くして、大きく見せようとしていますよね。
私はその逆で、横へ横へ意識を向けて水平ラインを整えることを考えます。
高さを低く抑えることは、近隣にも優しい建築になりますよね。
近代日本の住宅は総じて背が高いので、近隣には圧的で、街並みも美しくない…。
実際わたしは、英国やフランス、イタリアの田舎町に行って建築を見て来ましたが、本当に美しいのです。
昔の日本人は、「木を愛していたり」「自然に敬意を払っていたり」「侘、さびの精神があったり」と、
センスは世界に誇れるものだったのですが、現代の日本住宅は欧州で「うさぎ小屋」と揶揄されているほどです…。
なぜ現代人が、古代の木造建築を見て美しいと思うのか?
そんな事を考えながら一流の物を見れば、ヒントは沢山隠されています。
木造建築に限って言えば、プリミティブな世界ですから、「技術力も感性も古代のほうが上」なのです。
現代人は足元にも及ばない、勝てる要素が一つも見当たらないのです。
ですから私は、巷に溢れている「前衛を標榜するような住宅」には、残念ながら魅力を感じません。
ほんまもんに惹かれるのです。
安藤洋介